追い風向かい風
自転車に乗っていると思うんだよな。
いつも顔に風が当たる。
早くこげばこぐほど、それは強くなって、
髪をかき乱す。
目が乾いてきて瞼が開けられなくなる。
鼻で息するのが苦しくなって、口を開ける。目一杯の空気が一度に入って一瞬で喉を渇かす。
信号機の赤色を見て自転車を止めると、そんな煩わしい向かい風はぴたりと止む。代わりに背中に追い風が当たるようになる。
青になってまた漕ぎはじめる。
同時に、また向かい風が吹く。
……当たり前のことだ。
風は空気の流れだから。いくら無風だとしても、自分が動けば動いた分空気の塊にぶつかるのだから。
もし、自分が進んでいる時に追い風が吹いたとしたら、それはとてもとても強い風が吹いて背中が押されていることになる。
そんなことってほとんどない。
私たちが「前に進む」時はたいてい向かい風が吹く。
向かい風が吹くということは、もしくは、向かい風が強く吹きつけているということは、
「前に向かって進んでいる」ということ。
進むからこそ向かい風は吹く。
止まれば追い風が吹くだろう。進みなさいと誘われるように。
……さあ、
向かい風に負けないで進もう。